2009年 10月 20日
林檎の礼拝堂 |
新島から帰って、なんとか何人かにはメールが出せたんですが、
10月は、これから一日も休み無く働く予定なので、
返したいメールや電話があっても返せない人もいて申し訳ないのですが、
(ついでにパソコンの調子も良くなかった)
お返事、時間かかりますが、ちょっとだけ気長にお待ちくださいね。
一緒に展示をさせていただいたシーボーンアートの柳澤さんからメールがきました。
>秋田のリンゴ農家の産まれなので、あのリアルな
>リンゴに溢れた景色に感動でした。
と帰ってきて、大反応。
リンゴ農園だなんて・・・。
良いなあ・・・。見てみたい・・・。
僕はこんなにリンゴを作っておきながら、
実は本物の実がなっているのさえもまともに
見たことが無いのです。
凄く身近にリンゴを見てる人が観てたら、申し訳ないなあー
といつも思って作っています。
おそらく、僕よりも柳澤さんの方が、リンゴに関しては
かなり詳しく、もし一緒に作ったら
ディティールに凝ったリンゴか作れるに違いない。
(それは、僕が天草に住んでいたので、魚や海に関して
少しは勘が働くのと全く同じで、都会に住んでいたり
田舎に住んでいたり、その土地のそれぞれの特徴に
多分に僕らは影響を受けていて、そしてその人の
ライフサイズは必ず作品にも影響を与えていると思う)
それでも、リンゴを作っています。
前にも書いたように、図像として意味がもともと強い事。
形の見立て、思い出など、いろんな要素があります。
で、もう一つ作るきっかけとなった理由があって、
これは説明が長くなるし、話だけが凄く良い話で、
恥ずかしくなってしまうので
いつも書けないのですが
この際少しだけ書いてみようとかなあと思います。
僕の最も大好きな作品の一つに、
田窪恭治さんの「林檎の礼拝堂」という作品があります。
その作品が、とてもとても好きで、林檎を作りたくなったのでした。
林檎の礼拝堂は、グーグルなんかで検索すればわかるけど、
フランス、ノルマンディー地方のファレーズ市近郊の 小さな村にある、
サン・ヴィゴール・ド・ミュー礼拝堂という所です。
田窪恭治さんは
その村の皆に愛されつつも、朽ちていくままだった礼拝堂を
再生するというプロジェクト立ち上げます。
最初は、新進気鋭の現代美術アーティストだった田窪さんは、
沢山の斬新なコンセプトを元に新しい礼拝堂の案を
いくつもいくつも作り上げるのですが、しっくり来ない。
それまでは、教会を再生することが
自分だけの作品としての意識が強かったのかもしれません。
試行錯誤して、10数年。
家族も皆、フランスの小さな片田舎の村に移り住みつつ、
沢山の人に支えられながら生活している中で
最後の最後、田窪さんは、ある一つの形に魅せられます。
それは、10数年の間に大量に取った村の写真を見ていてですが、
一番沢山カメラの中に写りこんでいた「林檎」に焦点が当たるのでした。
林檎の木がこの村にはいたるところにあり、
ずっと生活していくなかで、
その村や村の人たちにとっては、
なくてはならない存在のものだと田窪さんには写りました。
それから、今まで、大改築して
斬新な形を作ろうとしていた計画をやめ
現在の礼拝堂をほとんどそのままの原形をとどめ、
中を改築し、真っ白な壁に
(これはまた凄く高度で素敵な手法なのですが、
何十もの色が重ねられていて彫ると色が出ると言う下地を作っています。)
その中に大きな大きな林檎の木の絵を描いた(彫った)のでした。
それは、礼拝堂の入り口からみえる大きな「いちい」の木とつながり、
この礼拝堂の中と外をつなげる大きな役割をしているように
見立てられています。
(四国の琴平再生計画に関わってらっしゃいますが、
小さい頃、その現在のお寺の住職が同級生で
普通の人はみられない「若冲の間」に入り込んでみていたそうです。
日本の襖絵などに外の絵がかかれるのと似ていますね)
また、ぼろぼろの瓦屋根もほとんどそのままにして、
壊れた瓦には、特注で作った色つきのガラスの瓦をはめ込み、
天気の日には、色とりどりの光が差し込む
本当に気持ちの良い空間を作りだしました。
それはその村にもフランスにも解けこんで、
集会場になり、イベントが催されたり、
村の人たちが交流できる以前より何倍も
沢山の人に愛される場所として再生したのです。
正直、一介の日本人がフランスの片田舎の礼拝堂を
ただ改築しただけでは、受け入れられることすら
難しいかったんじゃないのかなと思います。
何年も何年もかけて、村の人との親交をはかり、
その村に寄り添いながら、村や村の人たちを見つめ、
この村の中での礼拝堂を考え抜いて出来た作品だから
受け入れられたのだと思うのでした。
大きな改築には村の人もボランティアとして手伝っているし。
その長い長い年月をかけた作品であり
作り上げるまでの執念。
思い入れを考えるとぞくぞくするんです。
田窪さんは、このたった一つの作品で世界中に
名が知られるようになりました。
たった一つでも、人の記憶に残る何かが作れたら良いなと思う、
その中でも一番リスペクトしている作品の一つなのでした。
僕の林檎はそれと比べると
あまりに比べ物にはならないけれど、
この林檎は、誰かに手渡す手紙として作られていて
作品を買ってくれた人、
僕がお世話になった人に
手渡すようにしています。
(おせわになった人に渡すのは、
もしかしたらちょっと押し付けになるかもしれないので
気をつけないとなとも思っていますが)
またリンゴというものにはいろんな意味があるかもしれないですが、
私の中ではこの田窪さんの作品から影響を受けたことから
個人的な意味で「再生」というキーワードもあります。
正直、沢山作るのは大変。
やる事も日々一杯あるし
最初は遊びだったんだけど、
少しでも何か気持ちが伝わればいいなあとそんな気持ちのみ。
作品の一部だったのですが、いつの間にか、
どんどん作られることになりました。
これがどれだけ続けられるのか
全くわからないけれど、いろんな所に広まって
少しでも何かが皆に伝わったり、
それぞれが何か感じてもらえたり、
持ってる人や知ってる人が
交流できれば良いなと思っているし、
そういう作品があっても良いんじゃないかなと
思って作っています。
そんな訳で、今回渡したい人がたくさんいるのですが、
今の所全然まだ手がつけられません。
どうか気長にお待ちくださいね。
saroという空間も新島に出来た一つの作品なんじゃないかと、僕は思う。
少しづつ村に定着するといいなと思います。
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by namkirinn
| 2009-10-20 08:07
| 日々の制作